絵5  
    Vermeer Stained Glass              
           割れる前のステンドグラス
                                                                                                              (イメージ)

                  

フェルメールのステンドグラスについて考えてみる。-2

の2枚の絵はステンドグラスの部分だけを拡大したものです。   
左側(絵3)の下方を見てみますと、となり窓のステンドグラスの線が透けて見えるのを丁寧に描いています。
これをとっても、作者は見た物を正確に捉える姿勢が伺えます。お陰でステンドを再現するのに参考に
なった部分がいくつかありました。

絵3で補強バーが水平に5本入っているのが分かり、最下部の補強バーを見ると金属の光沢が見て
取れます。当時の補強バーは鉄製ですのでオランダの気候を合わせて考えると、じきに錆びて光沢を
失う筈です。そこでこのステンドグラスは取り付けられてからさほど月日が経っていない時に描か
れたのではないかと想像出来ます。ちなみに他の絵には補強バーの錆びが、ちゃんと描かれています。

て、作り手にとって先ず気になる所は割れた部分の修復跡です。どれが修復のラインなのでしょうか。
明らかに不自然なラインを見ていくと、(絵4)の@の所に割れが集中している様です。最初にここへ強い
衝撃があり、そこから上下に割れが派生しているみたいです。経験上、補強バーがこれだけ入っていて
この割れ方は単に棒で突付いた割れとは考えにくいです。例えば酔っ払って手を着いてしまいさらに体重
をステンドグラスに掛けてしまったらこんな割れ方も想像出来るのですが・・・。果たしてどの様にして割れ
たのでしょうか。  総合して私がイメージした割れる前のステンドグラスが(絵5)です。

は絵柄について考えてみます。いったい女性は何者なのでしょうか?自分なりに解釈する為に、拡大した
プリントをルーペで線や色の痕跡を探す毎日でした。このステンドグラスは手綱を引く姿が「節制」を表して
いるそうです。勿論、私はフェルメールの研究家ではありませんが絵を所蔵している美術館の学芸員の方が
「フェルメールの絵は見る人それぞれの解釈を可能とするところが魅力です。」とありました。
この学芸員の方の言葉に甘えながら今回の再現に望みたいと思います。

手に青い花束らしきものを持っている女性で中央下にある楕円は家紋でしょうか、鳥が3羽描かれています。
最初に悩んだのは(絵4)のAの部分です。何でしょうか?想像の域を出るものではありませんが拡大してみます
と、何か束ねた物の様にも見えました。そこでこれは花束の根元とではないかと。そうとしたら花の痕跡はないの
か見てみるとBの所に薄い紫色が入っていました。そこでラベンダーの様なドライフラワーの束を腰にくくりつけて
いるのではないかと考えました。

れにしても何故青い花だけなんでしょう?そこに何かメッセージが隠れているのでしょうか?
ヨーロッパの青い花、大きさで絞っていくとその中にアネモネがあります。ギリシャ語で「風の娘」という意味らしく
花言葉は「はかない恋、恋の苦しみ、期待」があるようです。絵の感じにあっている様にも思えますがどうでしょう。
最初は「花売り娘」かとも思いましたが、後ろになびいている布地やリボンで風を表現していること。また裸足であること。
アネモネ伝説のひとつに「流れ出た血からアネモネが咲いた」という説があり、花束の下に広がる赤いスカートとの
関連はどうなのか等々考慮するとギリシャ・ローマ神話に出てくる「アネモネ」という娘(ニンフ)そのものがモチーフでは
ないかと想像しました。そこで今回、持っている花も青系のアネモネにしました。

にも、リボンの風になびく形が少し不自然な気がしましす。リボンの描く形が無限∞と仮定すると(ちょうどこの時期
イングランドの数学者ジョン ウォリスが∞を使用) いつの時代も繰り返される男女の営みを示唆しているのか、
ステンドグラスの女性の視線が部屋にいる訳ありな二人に向くように計算されて製作したのか、いくら写実に描く作家とはいえ
何故割れた部分をわざわざ丁寧に描いたのでしょう?等々見つめていると、疑問が次から次へと湧いてきます。
ステンドグラスの絵の部分だけでこうなのですから絵全体を見ていくと迷宮に入って行ってしまいそうです。

ちなみに、ステンドグラスのデザインはフェルメール自身が描いて、それを職人に作らせた可能性は十分にあると
思います。

フェルメール再現ステンド」を御覧下さい。
   参考文献:翼の王国「フェルメールの旅」 福岡伸一著


                                                       Glass Field         

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